盛世天下～女帝への道～

唐の皇帝・李世民の第九子である李治には、晋王との名が与えられている。九つの頃に母を亡くしてからは、父である李世民の傍らで育ち、父による直々の教育を受けた。皇子の中でも、とりわけ深く愛されていたのだ。
穏やかで人と争うことを好まない――世間は多く、彼をそう評価する。仮にそれが事実であろうと、彼のような人物でさえ引きずり込むのが、時代の渦たるものである。

武家に生まれて14歳になった時、おばである楊淑妃の引き立てにより、五品才人として皇帝の後宮に入ることになった。
物語はまだ始まったばかり。後宮という名の伏魔殿に入った今、果たしてどこまでいけるだろうか？

唐の皇帝・李世民から最大の寵愛を受けた第四皇子、魏王・李泰。野心に燃え、次の皇帝の座を渇望する彼は、目的のためであれば手段を選ばず、また痴情を軽蔑している。あらゆるものは駒となり、指し手の自分には弱点などない――彼はそう信じている。

幼少期より唐の皇帝・李世民の愛を一身に受け、あらゆる望みを叶え、大切に育てられてきた高陽。出会ってからというもの、特別な才能を持つあなたに強く心惹かれていった。たびたび掖庭宮を訪れては、時を忘れて語り合う日々。本来、身分を超えた交わりは礼法に背くものであるが、彼女が気に留めることはなかった。

大慈恩寺の僧侶。高僧・玄奘に師事し、『大唐西域記』の編さんに携わる。また、玄奘が天竺から持ち帰った数多くの梵語仏典の翻訳にも尽力した。彼が持つ仏教の才や造詣には並々ならぬものがある。あの運命の出会いがなければ、いずれ師匠と同じく悟りをひらき、 高僧となっていただろう。だが高陽公主との邂逅により、奔放で愛らしい彼女が彼の世界に舞い込んだことで、すべてが一変したのであった。

京兆・韋氏の出身で、宮中随一の美貌と魅力を誇る貴妃。牡丹だけをこよなく愛している。柔らかく温厚な風貌とは裏腹に、人々が恐れをなすほどに極端で残酷な性格の持ち主。

李世民の嫡男。皇太子として幼い頃から期待を一身に背負ってきたが、政務よりも音楽や大自然に心惹かれていた。

男楽師で、女性さえ羨む美貌の持ち主。琴に魂を込め、人の心を揺さぶり、時に命さえ奪う。楽坊にて彼の琴音に惹かれた李承乾は、ふたりの出会いの遅さを嘆き、その魅力にどうしようもなく引き込まれていった。

幼なじみで、父は利州の官僚。あなたの父の赴任を機に武家と劉家は親しい間柄になり、いつも一緒に遊んで何でも語り合う、かけがえのない日々を共に過ごしていた。やがて、あなたの父の転任によってふたりは離れ離れとなり、再び会うこともなかった――ところがある日、後宮で才人になった彼女と思いがけない再会を果たした。懐かしさと喜びで胸が満ち溢れる。

四妃のひとりにして、あなたのおば。才人として後宮に上がれたのも、彼女の後ろ盾があったからこそだ。唐の皇帝・李世民からも大きな敬愛を受け、宮中では韋貴妃と並ぶ影響力を誇っていた。かつては双子の妹・楊闕と共に後宮入りしたが、その妹は何年も前に病に倒れ、命を落としたという。